7年間に渡って大活躍したDE ROSAトラックが退役しました。
全国で行われた各種イベントや試乗会で目にした方も多いと思います。強い存在感を持ったトラックでしたが、ベースは小型トラックの金字塔、ISUZUのELFです。必要に応じて荷室内を2階建てにすることが可能で、極東開発製の良質なパワーゲートのアシストで、積載性能も抜群でした。タイヤは夏も冬もミシュランを装着。2年前に首都圏を襲った大雪で、ミシュランのスタッドレスタイヤが頼もしかったこと!
荷室の下まで覆われたパネルは特注でエアロ効果が高く、高速道路では素晴らしい直進性で運転が快適でした。しかしトラックとしては軽量で、満載された荷物も軽量(軽量な自転車ですからね)。ゆえに横風は苦手で、高所で強い海風にさらされる伊勢湾岸道では怖い思いをしたものです。我々の使い方で、2トンの小型トラックとしては最高の機能を持ったトラックでした。そして運搬以外の用途、広告塔としての存在も一級品でした。
レーシングカーに使われるカッティングシートで装飾されたトラックは、我々にとって「日本一のカッティングシート職人」に施工をしてもらったものです。キャビンのドアに等間隔で並ぶCampagnoloの文字は1枚ものではなく、片面約35個の切り文字を1枚1枚貼ったものです。この7年間、ただの一辺も剥がれることはありませんでした。圧巻はバンパーに貼られたミシュランのロゴ。デザイン上、どうしてもロゴの一部がバンパーを固定する丸みを帯びたネジと重なってしまいます。そこはミシュランマンの右手なのですが、神業的テクニックでネジ頭の丸みに合わせて貼りつけてくれました。正直、いちばん初めに剥がれてくると思っていましたが、ここも剥がれることはありませんでした。このテクニックはサイクルモードで販売している「サコッシュセット」同梱のロゴステッカーにも活かされています。そしてこの作業の元を作った人物、それはひとりの女性デザイナーでした。
トラック導入が決まったとき、そのデザインはDE ROSAとCampagnoloを中心に据えることになりました。それぞれのブランドが持つイメージを上手に融合して、どんな場所でも目立ち、カッコ良く、遊び心もあって、記念写真を写すためにひとが集まってくるようなデザインのトラックがいいなと、我々は考えていました。そんな抽象的なリクエストをデザインに落とし込んでくれたデザイナー。実は有名な自動車雑誌、CG(CAR GRAPHIC)のロゴをデザインした雑誌デザインのデザイナーで、当方のオーダーを喜んで引き受けてくれました。普段は見えにくい荷室の屋根と最前部のパネルにハートがデザインされていたんですよ。彼女は施工現場にも足を運んでくださり、神保町の出版社まで完成報告に行ったときは優しい笑顔で喜んでもらえました。そんな彼女がこの世を去って間もなく3年。2015年クリスマスイブのトラックの退役を、関係者一同複雑な気持ちで迎えたのでした。
今まで可愛がってくれた皆さん、ありがとうございました。
近いうちに新たなトランスポーターをご紹介できるでしょう。